ロシアNIS調査月報
2021年2月号
特集◆ロシア経済の
新たなアジェンダ
 
特集◆ロシア経済の新たなアジェンダ
調査レポート
シベリア鉄道とバム鉄道の整備計画
調査レポート
コロナ禍ロシアにおける医療機器需要調査報告
調査レポート
ロシア新型コロナワクチン開発動向
イベント・レポート
ハバロフスク地方投資プレゼンテーション
地域クローズアップ
ソビャーニン市政下のモスクワの10年
イベント・レポート
カザン市医療現場から見たコロナ禍の現状
データバンク
2020年版ロシア工業団地・経済特区ランキング
INSIDE RUSSIA
ロシアの輸出拡大目標はリセット
ロシアの二国間関係
シアへ再接近を図るトルクメニスタン
HOW TO ビジネス実務
ロシア会計:貸借対照表
シリーズ 工業団地探訪
民営の先駆けボゴロツキー工業団地
エネルギー産業の話題
注目される水素エネルギーとロシア
自動車産業時評
脱内燃機車の動きにロシアはどう対応するか
ロジスティクス・ナビ
トランスコンテナの対日戦略
デジタルITラボ
ロシアにおける女性起業
産業・技術トレンド
ソ連のベストセラー旅客機Tu-154の引退
ロシア政財界人物録
DODO Pizza創業者のオフチンニコフ
データリテラシー
個人情報開示請求に対するYandexの対応

ウクライナ情報交差点
データで見る農産物輸出大国ウクライナ
中央アジア情報バザール
2020年中央アジアの主要ニュース
ロシアメディア最新事情
ロシア社会に衝撃を与えた生放送中の死
ロシア音楽の世界
ゲルギエフ&ウィーン・フィルが来日
駐在員のロシア語
再帰動詞
業界トピックス
2020年12月の動き
通関統計
2020年1〜11月の輸出入通関実績
おいしい生活
日本のコンビニに束の間「キエフ」が出現
記者の「取写選択」
チハノフスカヤの記者会見


調査レポート
シベリア鉄道とバム鉄道の整備計画

ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
A.バルダリ

 ロシアの欧州離れと東方シフトにともない、ロシアではアジア発着(とりわけ中国)の貨物取扱いが大幅に増加している。その際、国際トランジットを含むロシア〜アジア間の輸送の大動脈となっているのがシベリア鉄道とバム鉄道である。そうした輸送需要の増大に応えるためロシアでは、シベリア・バム両鉄道の輸送能力増強の必要性(とくにロシア極東を中心とする東部鉄道管区において)が唱えられている。
 本稿では、上記のような事情を踏まえて、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所のアンナ・バルダリ研究員に、シベリア鉄道とバム鉄道の現状と発展計画、さらに両鉄道を利用した国際輸送の展望に関するレポートを作成していただいた。以下では、その内容を紹介する。


調査レポート
コロナ禍ロシアにおける医療機器需要調査報告

ロシアNIS経済研究所 主任
長谷直哉

 当会ではロシアにおける感染症対策情報や医療機関に関する情報を収集し整理するとともに、ロシア各地方で感染症対策の前線で奮闘している現場医師を対象に、アンケート及び聞き取り調査を実施した。2020年3月以降、ロシアでは連日、日本における感染者数とは文字通り桁違いの患者と向き合っており、本調査を実施するにあたっては医師のスケジュールを確保することに非常な困難を伴った。このため、本調査はいわゆるコロナ禍の第一波収束後から第二派発生までの、2020年8〜9月に実施したものである。このため、本稿で紹介する各種調査結果及びデータは、いわゆる第一波の結果であることに留意願いたい。この現地医師に対して行った調査では、「コロナ禍によって医療機器に対する需要がどのように変化したのか」との問いを軸として質問内容を組み立て、回答を回収した。本稿ではこれを整理して結果を紹介させていただく。


調査レポート
ロシア新型コロナワクチン開発動向

ロシアNIS貿易会モスクワ事務所 所長
齋藤大輔

 新型コロナウイルスのワクチン開発に勤しむのは、日本や欧米諸国、中国に限らない。ロシアもまた、コロナ危機の早期収束とワクチンビジネスの世界展開をにらんで、活発に動いている。ワクチンの開発にまず取り組み、国内に供給するとともに、必要とする国にも輸出して、ロシアの存在感を誇示する戦略だ。
 ロシアは2020年8月に世界に先駆けて、新型コロナウイルスのワクチン「スプートニクV」を承認した。同年10月にも2例目のワクチン「エピヴァクコロナ」を承認した。3例目、4例目の開発も進めている。スプートニクV、エピヴァクコロナとも臨床試験の最終段階を終えてない段階での「見切り発車」での承認だった。12月初めからは大規模な集団接種がロシア国内で始まった。海外への供給や現地生産もほぼ同時期にスタートした。ワクチンの接種でコロナ危機を終わりにしたい、1年にわたって続く社会・経済活動の制限から抜け出したいと、世界中の誰もが思っているはずである。ワクチンに期待を寄せるのは当然だろう。ワクチンは流行抑え込みの「切り札」となるのか。
 そこで本稿では、ロシアのワクチン開発動向について紹介する。


イベント・レポート
ハバロフスク地方投資プレゼンテーション

 12月8日(火)、ロシアNIS貿易会では、オンラインイベント「ロシア・ハバロフスク地方貿易投資プレゼンテーション」を開催した。今回のプレゼンテーションでは、ハバロフスク地方に所在する建材や木材加工、遠隔操作システム、医薬品の製造分野の企業4社の代表者にご登壇頂き、事業内容や日本企業との協業可能性についてご報告いただいた。本イベントには、福島正則・在ハバロフスク日本国総領事にご出席いただいた他、日ロ双方から90名以上が参加した。また、今回は北海道、新潟県、兵庫県、鳥取県の関係機関から協力をいただき、これら諸県からの参加も多かった。本号では、その報告要旨(質疑応答部分での内容も加味)をご紹介することとしたい。(服部雅史)


地域クローズアップ
ソビャーニン市政下のモスクワの10年

 2020年10月にソビャーニン・モスクワ市長が就任から10年を迎えた。地方自治体、州政府、連邦管区、連邦政府と着実にキャリアを積み上げ、その手腕を発揮してきたソビャーニンは、モスクワを世界有数の大都市に発展させたルシコフ前市長の後任として、2010年10月に市長に就任。大都市モスクワの投資環境や生活環境をより改善させてきた。そこで本稿では、ソビャーニン市政下のモスクワの10年の発展の軌跡を振り返るとともに、コロナ対策を含めた最近のモスクワ情勢について概説する。(中馬瑞貴)


イベント・レポート
カザン市医療現場から見たコロナ禍の現状

 2020年12月17日、医療分野ウェビナー「カザン市医療現場から見たコロナ禍の現状」を開催した。このウェビナーでは当会が実施したコロナ禍発生後のロシア医療機関における医療機器需要調査について報告した他、コロナ禍が拡大する中でも協力が得られたタタルスタン共和国・カザン市の公立病院勤務医に対するインタビュー動画を配信し、医療現場がどのような状況にあるのかを知らせることができた。また、日本側専門家としてロシア医療市場に詳しいピー・ジェイ・エル椛纒\取締役の山田氏が関連コメントを発信した。本ウェビナーにより、コロナ禍における日ロ医療分野での新たなビジネス発展につながることが期待される。以下、概要紹介を行う。 (服部雅史)


データバンク
2020年版ロシア工業団地・経済特区ランキング

 ロシアの『エクスペルト』誌は2017年から「ロシア工業団地・経済特区ランキング」という資料を発表している。そして今回、同誌2020年12月7〜14日号(No.50)に、2020年版の工業団地・経済特区ランキングが掲載された。実は、この資料に関しては投資家にとっての有用性を疑問視する声も寄せられているようであり、小誌としても取り扱いに迷ったが、一覧性・網羅性といったメリットは依然として認められそうである。そこで、以下では2020年版の最新ランキングを抜粋して紹介することにする。


INSIDE RUSSIA
ロシアの輸出拡大目標はリセット

 2018年5月に始まったロシアの第4期のプーチン政権では、その間に達成すべき主要指標が、「国民的目標」として設定されており、それを実現するために12本の「ナショナルプロジェクト」が制定されている(インフラ総合計画も加えれば13本)。そのうち、本稿で取り上げる輸出促進のテーマにかかわるのは、ナショナルプロジェクト「国際協業と輸出」である。国民的目標の達成期限は当初、プーチンの現政権が終了する2024年に設定されていた。ところが、2020年7月21日にプーチン大統領が署名した大統領令により、2030年を期限として新たに再設定された国民的目標が発表された。通商政策の面においてはもともとは、「2024年までに、非原料・非エネルギー商品の輸出を、2,500億ドルにまで拡大する」という目標が掲げられていた。それが、2020年7月の大統領令により、「2030年までに、非原料・非エネルギー商品の輸出を、2020年比で、少なくとも70%、実質拡大させる」という目標へと軌道修正されたのである。(服部倫卓)


ロシアの二国間関係
ロシアへ再接近を図るトルクメニスタン

 カザフスタン、ウズベキスタンと中央アジアが続いた本連載。今回は同じく中央アジアのトルクメニスタンとの関係にスポットを当てることにしたい。ご存知のとおり、トルクメニスタンは国の外交方針として「永世中立国」を掲げており、CISを含む旧ソ連およびユーラシア地域の多国間連合には1つも正式加盟していない。従って、トルクメニスタンとロシアとの関係については二国間関係が主眼となる。(中馬瑞貴)


HOW TO ビジネス実務
ロシア会計:貸借対照表

 貸借対照表は、「企業の財政状態を明らかにするため、貸借対照日におけるすべての資産、負債及び資本を記載し、株主、債権者その他の利害関係者にこれを正しく表示するものでなければならない。」と定義される、これまた非常に重要な情報を持つ会計報告書類です。今回はこの貸借対照表がロシア会計においてどのような形になっているのか、実務の視点からご紹介したいと思います。(小川弘美)


シリーズ 工業団地探訪
民営の先駆けボゴロツキー工業団地

 本連載でこれまで探訪したグラフツェヴォ工業団地は州政府の開発・運営による工業団地、リペツク経済特区は連邦政府と州政府の共同開発・運営による工業団地であった。いずれも公営の工業団地である。しかし、ロシアにおける工業団地のおよそ6割は民営である。今回は民営による先駆的な工業団地を探訪しよう。モスクワ州の東部に位置するボロゴツキー工業団地である。(大橋巌)


エネルギー産業の話題
注目される水素エネルギーとロシア

 脱炭素社会を目指す欧州諸国を中心に、燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素を燃料として利用しようという動きが強まっています。また、世界最大のエネルギー消費国である中国も水素重視の意向を示しており、今、世界のエネルギー分野では「水素ブーム」のような状況が生じています。ロシアもその流れに遅れてなるまいと水素生産強化の方向性を示しています。今回は、主要国の水素への移行の動き、ロシアの水素ブームへの対応ぶり、燃料としての水素の特性と課題などを紹介します。(坂口泉)


自動車産業時評
脱内燃機車の動きにロシアはどう対応するか

 世界では脱炭素社会への移行の流れが加速しており、ガソリンと軽油を燃料とする新車(内燃機関車)の販売を2030〜2035年以降に禁止する意向を表明する国が複数出現しています。ご存じの通り、2020年12月初めには日本政府も同様の計画を検討していることが判明しました。この動きは、世界有数の産油国であるロシアに大きな影響を及ぼす可能性があります。この問題意識をベースに本稿では、脱内燃機関車の動き、電気自動車(EV)をめぐる状況、さらには、ロシア市場におけるEVの現時点での存在感などについて紹介します。(坂口泉)


ロジスティクス・ナビ
トランスコンテナの対日戦略

 シベリア鉄道を利用した国際コンテナ輸送は、欧州向けトランジット輸送を念頭に体制整備が進められています。ロシアの代表的鉄道コンテナオペレーターであるトランスコンテナの動きを紹介します。(辻久子)


デジタルITラボ
ロシアにおける女性起業

 ロシアでは、ソ連時代から女性の労働が礼賛され、2017年には企業トップに占める女性比率が世界1位となる(Grant Thornton International調べ)など、世界的にもビジネスシーンにおける女性の社会進出度合いは決して低くない。先日、弊社でも、女性スタッフの起案で、ロシアの女性起業家にフォーカスを当てたオンラインピッチイベントを開催した。今回は、ロシアのスタートアップシーンにおける女性起業家の実像に迫ってみたいと思う。(牧野寛)


産業・技術トレンド
ソ連のベストセラー旅客機Tu-154の引退

 2020年10月28日、アルロサ航空がTu-154という旅客機の運航を終えた。このアルロサ航空のTu-154は、ロシアで旅客機として運行されていた最後の1機であった。Tu-154の引退は、単に古い飛行機が引退したということに留まらず、ロシア航空業界の一つの時代の終わりであった。Tu-154はソ連・ロシアが作ったジェット旅客機では、長らく最大勢力を誇った機種であり、ロシアの空は、この機種なくして語れないからだ。今回はソ連・ロシアの空の世界を代表した旅客機であるTu-154について紹介する。(渡邊光太郎)


ロシア政財界人物録
DODO Pizza創業者のオフチンニコフ

 近年ロシアへ行くたびに目につくようになったファストフード店があります。それが「Додо Пицца(DODO Pizza)」です。ロシア在住者の方はもちろん、出張ベースでロシアを訪れている方も各地の街角やふらりと寄ったショッピングモール内で見かけたこと、利用したことがあるのではないでしょうか。ロシアのファストフード市場は、その起こり方からして外資であるマクドナルド、KFCなどの占有率が高く、ロシア発のファストフードブランドは各地で立ち上がるものの、マイナーなシェア争いから這い上がれるブランドはなかなか出てきませんでした。その壁を破ったと言えるのが、DODO Pizzaです。今回は、このロシア発ピザチェーンの創業者、ロシアの一部報道では「ピザ業界のスティーブ・ジョブス」などと評されるフョードル・オフチンニコフ氏について紹介しようと思います。(長谷直哉)


データリテラシー
個人情報開示請求に対するYandexの対応

 今回は、Yandexが公開している、ロシア政府機関から同社に対する個人情報開示請求に関するデータから、ロシア国民の多数の情報を取り扱うYandexのプライバシーポリシーについて考えてみたいと思います。(長谷直哉)


ウクライナ情報交差点
データで見る農産物輸出大国ウクライナ

 ウクライナでは、重化学工業が斜陽化し、穀物およびひまわり油の輸出を軸とした農業部門が経済の稼ぎ頭となって久しい。今回はいつもよりも枠を拡大して、統計データを整理しつつ、ウクライナの農業生産と農産物輸出の概況につき報告する。(服部倫卓)


中央アジア情報バザール
2020年中央アジアの主要ニュース

 世界が新型コロナ一色だった2020年。しかし、旧ソ連地域では、ベラルーシの反体制デモ、キルギスの第三次革命、ナゴルノ・カラバフ紛争の再燃など、新型コロナ以外にも注目のニュースが目白押しであった。そこで本稿では中央アジア各国の2020年の主要ニュースを紹介する。(中馬瑞貴)


ロシアメディア最新事情
ロシア社会に衝撃を与えた生放送中の死

 寒さが本格的になった12月上旬、モスクワ郊外の一軒家からほぼ裸で放り出され、27歳の女性が凍死(?)するというショッキングな出来事があり、大きなニュースになりました。(徳山あすか)


ロシア音楽の世界
ゲルギエフ&ウィーン・フィルが来日

 2020年はクラシック音楽界も、新型コロナウイルス一色に塗りつぶされてしまった1年だった。ザルツブルグ音楽祭こそ強行開催されたものの、渡航予定だった5月の「プラハの春音楽祭」「ウィーン国立歌劇場」、6月のアルメニア音楽祭は中止され、結局2020年は国外に出ることが無い、この35年間では初めての年となってしまった。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


おいしい生活
日本のコンビニに束の間「キエフ」が出現

 コンビニのミニストップは12月4日、ウクライナ料理やロシア料理で定番の「チキンキエフ」を商品として売り出した(我々ロシア畑の人間には、「キエフ風カツレツ」という呼び名の方が馴染みがある気もするが)。筆者も早速、近所のミニストップにどんな様子なのか拝見しに行った。(服部倫卓)


記者の「取写選択」
チハノフスカヤの記者会見

 「もちろん愉快なことではない。しかし私たちは良い面を探す必要がある」。駐ベラルーシ日本大使が昨年11月3日、ルカシェンコ大統領に信任状を提出し、日本が政権の正統性を事実上認めていることをどう考えるかと私が質問すると、反政権派の象徴チハノフスカヤ氏はこう切り出した。12月16日、ブリュッセルにある欧州連合(EU)欧州議会の記者会見でのことだ。(小熊宏尚)