ロシアNIS調査月報2021年3月号特集◆地域情勢から読み解く |
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特集◆地域情勢から読み解くロシアの今 |
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講演録 |
コロナ禍のロシア極東経済と北極海航路 |
調査レポート |
制度疲労に直面するロシアの電力産業 |
調査レポート |
ナヴァリヌィの反乱とロシアの地域情勢 |
ロシア極東羅針盤 |
ロシア鉄道の東方シフト ―輸送力拡張の現在― |
データバンク |
ロシア地域首長影響力ランキング |
データバンク |
2020年版ロシア地域投資環境ランキング |
地域クローズアップ |
異色の首長が続いたチュヴァシ共和国 |
INSIDE RUSSIA |
コロナがロシアにもたらした「国内旅行元年」 |
エネルギー産業の話題 |
サハリン石油ガスプロジェクトの現状 |
デジタルITラボ |
トムスクのイノベーションエコシステム |
シベリア・北極圏便り |
ノヴォシビルスク発のワクチンとヴェクトル研 |
ロシアメディア最新事情 |
汚職と戦い人気だったヤクーツクの女性市長辞任 |
シリーズ 工業団地探訪 |
ブラウンフィールド型カマ工業団地「マスチェル」 |
データバンク |
2020年の日ロ貿易(速報値) |
ロジスティクス・ナビ |
2020年の実績に見るロシアの運輸の明暗 |
自動車産業時評 |
ホンダがロシア乗用車市場から撤退 |
ロシアの二国間関係 |
互いに重要性が高まるロシアとアゼルバイジャン |
HOW TO ビジネス実務 |
ロシア労務管理:有給休暇(1) |
ウクライナ情報交差点 |
ウクライナの鉱工業では化学部門が好調 |
中央アジア情報バザール |
カザフスタンのEコマース市場 |
産業・技術トレンド |
ロシア製新型ジェットエンジンの初飛行 |
データリテラシー |
ロシアの温水洗浄便座市場は有望か |
ロシア音楽の世界 |
プロコフィエフの「戦争ソナタ」 |
駐在員のロシア語 |
壁に耳あり |
業界トピックス |
2021年1月の動き |
通関統計 |
2020年1〜12月の輸出入通関実績(速報値) |
おいしい生活 |
ビタミンたっぷりのサジー・ティーが美味しい |
記者の「取写選択」 |
東日本大震災と日ロ関係 |
講演録
コロナ禍のロシア極東経済と北極海航路
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
P.ミナキル Ye.ザオストロフスキフ
2021年1月14日、(一社)ロシアNIS貿易会と(公財)環日本海経済研究所(ERINA)は、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所のP.ミナキル博士とYe.ザオストロフスキフ研究員を講師に招き、ウェビナー「コロナ禍のロシア極東経済と北極海航路」を共催、ROTOBO及びERINAの会員を中心に150名が参加した。以下ではその概要を紹介する。なお、当日は参加者から多くの質問をいただいたが、時間の制約上、すべての質問に対応できなかった。それらの質問に対しては、後日、お2人の講師より書面で回答をいただいたので、本稿ではそれも併せてご紹介することとしたい。
調査レポート
制度疲労に直面するロシアの電力産業
ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉
最近になり、ロシアの電力分野特有の制度に軋みが見え始めている。大口需要家の我慢が限界に達しつつあるのだ。このため、ロシア政府も大口需要家に相応の配慮をせざるをえなくなってきている。部分的にではあれ既存の制度の見直しをしないと事態の収拾は難しくなりつつあるとの印象を受ける。本稿ではその点に注目しながら、2020年のロシアの電力分野の動きを回顧する。
調査レポート
ナヴァリヌィの反乱とロシアの地域情勢
ロシアNIS経済研究所 所長
服部倫卓
2021年に入り、ロシア情勢はいきなり大きく揺れ動いた。1月23日(土)、反体制活動家A.ナヴァリヌィ氏の呼びかけに応じて、ロシア各地で無許可の反政府デモが行われ、多数の参加者が治安当局によって拘束された。1月31日(日)にも再度デモが挙行され、そこでも多くの参加者が拘束された。2回のデモを合計すると、計1万人以上が拘束されたとのことであり、近年のロシアでは前例のない事態となった。
そこで本稿では、ナヴァリヌィの反乱の事実関係を整理するとともに、地方レベルの動きを概観し、主に現地有識者の論評を参照しながら、情勢の解明を試みる。その上で、ランキング資料や過去の選挙結果なども参照しながら、ロシア諸地域とプーチン体制の関係性を考察する。
ロシア極東羅針盤
ロシア鉄道の東方シフト
―輸送力拡張の現在―
新型コロナウイルス感染症の流行が収まらないまま2021年を迎えた。ロシア鉄道にとっても厳しい日々が続く。ロシア鉄道の2020年は旅客部門を中心に減益になる見込みである。2020年12月30日、ロシア政府は、ロシア鉄道の投資プログラムを承認し、2021年からの3年間で2兆ルーブルを確保することが決まった。このうち2021年は7,300億ルーブルがあてられる。なかでも最重要プロジェクトとして、国を挙げて取り組んできたのがシベリア鉄道東部区間とバム鉄道の輸送力拡張である。(齋藤大輔)
データバンク
ロシア地域首長影響力ランキング
ロシアの「政治・経済コミュニケーション・エージェンシー」が毎月「ロシア地域首長影響力ランキング」を発表している。そこで本稿では、2020年12月29日に発表された、2020年12月版のランキングをご紹介する。
データバンク
2020年版ロシア地域投資環境ランキング
ロシアの情報機関「エクスペルト」は先日、毎年恒例のロシア地域投資環境ランキングの2020年最新版を発表した。以下では、この資料を抜粋して紹介する。
地域クローズアップ
異色の首長が続いたチュヴァシ共和国
ロシアがコロナ騒動に見舞われる直前の2020年1月、ヴォルガ川上流に位置するチュヴァシ共和国でイグナチエフ首長が「信用失墜」を理由に首長を解任された。大統領が首長を解任するための大統領令に署名する場合、事実がどうかは別として、表向きは「本人の希望により」という理由をつけることが通例となっている。無論、事例は少ないながら、汚職などが判明した場合に「信用失墜」を理由として解任されるケースというのも前例はある。しかし、今回はそれだけでは終わらなかった。首長を辞任した数カ月後、イグナチエフは自身を解任した大統領令について連邦最高裁判所に不服申し立てをしたのである。大統領の決定を違法だと主張することはプーチン政権においてはこれまでに前例のないことだった。(中馬瑞貴)
INSIDE RUSSIA
コロナがロシアにもたらした「国内旅行元年」
当然のことながら、新型コロナウイルスのパンデミックで外国との行き来が大幅に制限された2020年は、ロシアの外国旅行はアウトバウンド、インバウンドともに激減した。ロシア旅行業者協会の推計値によれば、2020年にロシア国民が外国に旅行に行くアウトバウンドは、前年比77.5%縮小した。また、外国人がロシアを旅行で訪れるインバウンドは、前年比92.4%も縮小した。一方、ロシア国民によるロシア国内旅行は通年で、前年比35〜40%ほど縮小したと推計されている。これも大幅減には違いないが、アウトバウンドおよびインバウンドに比べれば、まだしも落ち込み幅は小さかった。(服部倫卓)
エネルギー産業の話題
サハリン石油ガスプロジェクトの現状
ロシアの石油ガス専門誌『石油と資本』の最新号(2020年12月号)にサハリン大陸棚のプロジェクトについての記事が掲載されましたので、今回はその記事を参考にして、サハリン1、サハリン2、ならびに、サハリン3(ガスプロムとガスプロムネフチの新鉱床開発プロジェクト)の現状についてご紹介します。(坂口泉)
デジタルITラボ
トムスクのイノベーションエコシステム
先日、筆者は仕事の関係でシベリアの街トムスクを訪れる機会があった。シベリアの中心地といえば、ノヴォシビルスクが挙げられる。ここには、筑波研究学園都市のモデルにもなったアカデムガラドクがある。ノヴォシビルスクは、シベリアにおける学術研究の中心地であり、ロシアにおけるイノベーション産業を考える上では重要な都市でもある。一方で、モスクワやサンクトペテルブルグなどの大都市を中心に、ロシアのイノベーション産業と関わっていると、トムスクの出身者というのは意外に多い。出張中は、トムスクのイノベーション産業に関わる様々な人々に話を聞くことができた。今回は、トムスクにおけるイノベーション産業のエコシステムについて、紹介したいと思う。(牧野寛)
シベリア・北極圏便り
ノヴォシビルスク発のワクチンとヴェクトル研
世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルスですが、2020年12月下旬には英国で初めて感染力の高い新たな変異株の存在が確認され、その後世界へと拡がり、年が明けてからは日本でもこの変異株によるCOVID19感染例が様々な都市で報告されるようになっています。この変異株に関する調査や研究は現在世界各国で行われていますが、この変異株をロシアで初めて分離し、また本年1月下旬には世界で初めてこの変異株の構造を画像に捉えることに成功した研究所がシベリアのノヴォシビルスク州にあります。この研究所の名称は、ロシア国立ウィルス・生物学研究センター「ヴェクトル(Vector)」で、一般にはヴェクトルと呼ばれています。そして、ヴェクトルはロシアで承認された2番目のCOVID19ワクチン「EpiVacCorona」の開発主体でもあります。本稿では、EpiVacCorona開発状況とヴェクトルの概要について説明したいと思います。(長谷直哉)
ロシアメディア最新事情
汚職と戦い人気だったヤクーツクの女性市長辞任
特に長かった今年の正月休みが終わり、ようやく仕事始めとなった1月11日、サハ共和国ヤクーツクの市長、サルダナ・アフクセンチエヴァ氏が辞意を表明したという思いがけないニュースが飛び込んできました。アフクセンチエヴァ氏は反汚職を掲げ、2018年9月の選挙で、中央政権与党「統一ロシア」の候補を破りヤクーツク初の女性市長となりました。市長就任後は、しがらみを断ち切り、様々な汚職を撲滅し、果敢に公約を果たしてきました。本コラムでは、ヤクーツクの枠を飛び越え全国的に人気があった彼女の人となりと、辞任理由をめぐる論争について考察してみます。(徳山あすか)
シリーズ 工業団地探訪
ブラウンフィールド型カマ工業団地「マスチェル」
今回はタタルスタン共和国のユニークな工業団地を探訪したい。モスクワから東へ約1,000キロ、同共和国東部の主要都市ナベレジヌイエ・チェルヌイにあるカマ工業団地(KIP)「マスチェル」である。(大橋巌)
ロジスティクス・ナビ
2020年の実績に見るロシアの運輸の明暗
2020年のロシア港湾と鉄道の輸送動向を、速報値を基に概観します。コロナ禍で輸送品目、モード、地域・水域間の明暗が浮き彫りになりました。(辻久子)
自動車産業時評
ホンダがロシア乗用車市場から撤退
2020年暮れ、本田技研工業のロシア現地法人「Honda Motor Rus」は、ロシア市場へのホンダ・ブランド乗用車の供給を、2021年末をもって停止すると発表した。もっとも、それに向けた動きは5年ほど前から始まっており、今回の決定は業界関係者にとっては想定の範囲内だったと言える。(服部倫卓)
ロシアの二国間関係
互いに重要性が高まるロシアとアゼルバイジャン
2021年1月11日、プーチン大統領が新年最初に会談した外国の要人はアリエフ・アゼルバイジャン大統領とパシニャン・アルメニア共和国首相であった。ご存じのとおり、2020年9月27日にアゼルバイジャンとアルメニアとのあいだでナゴルノ・カラバフ紛争が再燃し、11月10日に停戦合意が結ばれたのだが、その合意の進捗状況について確認すべく、プーチン主導で三者会談が実現したのである。紛争の詳細については数々の論考が出ているのでそちらにお任せすることにして、本稿ではその当事国の1つであるアゼルバイジャンとロシアとの関係について取り上げることにしたい。(中馬瑞貴)
HOW TO ビジネス実務
ロシア労務管理:有給休暇(1)
ロシアにおける労務管理の中でもなかなか理解が難しい休日・休暇関係。その中でも最も分からないとされるのは何と言っても有給休暇とその手当です。今回はこれらの難問にご一緒に挑んでいきたいと思います。(小川弘美)
ウクライナ情報交差点
ウクライナの鉱工業では化学部門が好調
ウクライナ統計局より、2020年の鉱工業生産統計が発表されたので、図表にまとめて紹介する。ウクライナの鉱工業生産は、2014年の危機を受けて2015年まで大きく落ち込んだ後、2016年には4.0%増、2017年には1.1%増、2018年には3.0%増と、回復傾向を示した。しかし、2019年には0.5%減と、再び低迷する。そして、コロナ禍を受けた2020年には5.2%減と、不振が色濃くなった。2020年の落ち込みにより、過去数年の回復がフイになってしまった形である。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
カザフスタンのEコマース市場
今回は「フォーブス・カザフスタン版」が紹介しているカザフスタンにおけるオンライン商取引(Eコマース)プラットフォームの売上高ランキングを紹介する。このランキングは、カザフスタンで利用可能なインターネット・プラットフォームを対象に2019年の各プラットフォームにおけるオンラインショッピングの総売上高に基づいてランク付けを行っている。対象は個人向けのサービス(B2CとC2C)であり、B2Bは考慮されていない。(中馬瑞貴)
産業・技術トレンド
ロシア製新型ジェットエンジンの初飛行
2020年12月15日、新型のロシア製エンジンを搭載したMC-21型旅客機が初飛行をした。MC-21は米国製PW1400Gを搭載した機体の開発が先行していたが、ロシア製PD-14も選択できるようになっており、PD-14エンジンの開発もMC-21の開発と平行して行われていた。PD-14エンジンは、これまでのロシアの旅客機用ジェットエンジンと比べると、各段に進化したエンジンである。本稿では、PD-14について解説する。(渡邊光太郎)
データリテラシー
ロシアの温水洗浄便座市場は有望か
日本では一般家庭を含めてどこでも見かけるけども、ロシアではほとんど見かけないもの。こうしたものはたくさんありますが、その一つに「温水洗浄便座」があります。本稿ではロシアの温水洗浄便座市場に関するデータを紹介します。(長谷直哉)
おいしい生活
ビタミンたっぷりのサジー・ティーが美味しい
ロシアに行くと必ず飲むのはビタミンたっぷりのサジー・ティー(サジー、蜂蜜、レモンなどが入ったホットティー)。ロシアで風邪気味だった時にサジー・ティーを勧められ飲んだところ、翌日に風邪が治った。(斉藤いづみ)
記者の「取写選択」
東日本大震災と日ロ関係
モスクワの職場の電話が鳴った。2011年3月11日の東日本大震災の数日後、付き合いがある名刺店からだった。「名刺を無料で作ります」。店長は日本の悲劇に心を痛めていた。「何かできることはないか」と考え、日本企業への名刺寄付を思いついたという。(小熊宏尚)