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ロシアNIS調査月報2021年4月号特集◆ユーラシア空間の |
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特集◆ユーラシア空間の地経学 |
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講演録 |
アゼルバイジャン・カザフスタンの経済と石油産業 |
イベント・レポート |
中央アジア・バーチャルEXPO(CAVEX) |
イベント・レポート |
CAVEX中央アジア国別投資ウェビナー |
調査レポート |
膠着化するベラルーシ情勢と対ロシア関係 |
ロシアの二国間関係 |
ロシア重視を鮮明にするキルギス新政権 |
ウクライナ情報交差点 |
DCFTA発効から5年のウクライナ・EU関係 |
中央アジア情報バザール |
コロナ禍の中央アジア各国の施政方針 |
ロシア政財界人物録 |
グラジエフとユーラシア経済統合 |
データリテラシー |
ロシア・NISで広がるTelegramの利用 |
ロシアメディア最新事情 |
コロナ禍で感じる労働移民と地元市民の差 |
調査レポート |
2020年のロシア乗用車市場の総括 ―コロナ禍と市場のガラパゴス化― |
調査レポート |
ロシア極東のナショナルプロジェクト |
イベント・レポート |
ロシア・リャザン州貿易投資セミナー |
INSIDE RUSSIA |
ロシア国民はプーチンの続投を望むのか? |
ロシア極東羅針盤 |
極東進出日系企業拠点数 |
地域クローズアップ |
ペルミ地方は知られざる欧州とアジアの境界 |
エネルギー産業の話題 |
ヴォストークオイルの最新動向 |
ロジスティクス・ナビ |
ロシア港湾動向:2020 |
シリーズ 工業団地探訪 |
グリーンステート工業団地(レニングラード州) |
デジタルITラボ |
ロシアにおける医薬品ネット販売の展望 |
HOW TO ビジネス実務 |
ロシア労務管理:有給休暇(2) |
駐在員のロシア語 |
プラスチックVSプラスチカ |
業界トピックス |
2021年2月の動き |
通関統計 |
2021年1月の輸出入通関実績 |
ユーラシア珍百景 |
バシキール・ソーダ社の石灰石運搬リフト |
記者の「取写選択」 |
森喜朗が言わなかったこと |
講演録
アゼルバイジャン・カザフスタンの経済と石油産業
I.シャバノフ O.チェルビンスキー
2021年3月1日(月)、3日(水)、5日(金)の3日間にわたり、ロシアNIS貿易会では、ロシア・カザフスタン・アゼルバイジャンの経済・エネルギー専門家による第2回連続ウェビナー「コロナ禍の2020年を回顧する−経済と石油ガス産業への影響−」を開催した。本稿では、その中から3月1日のアゼルバイジャンとカザフスタンの専門家による報告要旨をご紹介する。
イベント・レポート
中央アジア・バーチャルEXPO(CAVEX)
2021年2月1日(月)〜26日(金)、ロシアNIS貿易会は「中央アジア・バーチャルEXPO(以下、CAVEX)」を開催した。
本事業は、新型コロナウィルスに対応する新しい形での中央アジア5カ国の企業と日本企業との交流を目的として実施した。2月1日(月)にオンラインプラットフォーム(特設ウェブサイト)を公開し、2週間のプレオープン期間中にサイトを通じて参加国の基礎情報や企業・組織を紹介し、B2Bの受付をスタートした。15日(月)からは小規模なバーチャル展示会を開催し、19日(金)までの本開催期間がスタートした。本開催期間中は1日1カ国ずつのナショナルデイを設定し、展示会場の特設サイトで対象国のPR動画を映写したり、オンラインで対象国の投資ウェビナーを開催したりした(ウェビナーの詳細は別稿)。20日(土)以降もウェブサイトや展示会の公開を続け、フォローアップを行った。
CAVEXの特設ウェブサイトおよびバーチャルミニ展示会には各国の政府機関、組織、企業が参加し、日本企業に向けて商品や投資プロジェクトのPRを行った。以下にその概要をご紹介する。(中馬瑞貴)
イベント・レポート
CAVEX中央アジア国別投資ウェビナー
2021年2月15日(月)〜19日(金)にかけて、ロシアNIS貿易会では「中央アジア・バーチャルEXPO(CAVEX)」(詳細は別稿)の一環として、中央アジア5カ国を対象とする投資ウェビナーを開催した。本ウェビナーは1日1カ国を対象とし、国ごとに時間や構成が異なっていたものの、5日間でのべ約330人が視聴した。以下では各ウェビナーの概要について紹介する。
調査レポート
膠着化するベラルーシ情勢と対ロシア関係
ロシアNIS経済研究所 所長
服部倫卓
ロシアの西隣に位置し、統合パートナーでもあるベラルーシでは、2020年8月9日に投票が実施された大統領選挙の後、選挙の不正に憤り、独裁者A.ルカシェンコの退陣を求める市民たちによる運動が巻き起こった。ルカシェンコ体制は、大統領選直後は、市民の勢いに押され、風前の灯火かとも思われた。しかし、躊躇なく暴力を行使し、ロシアのV.プーチン政権からの支援にも支えられることで、ルカシェンコはいまだに権力の座に居座っている。それに対し、市民の多数派は、完全にルカシェンコ体制を拒絶しており、抵抗の姿勢を崩そうとしない。ただし、非暴力を貫いているので、突破口は見出せずにいる。こうして、ベラルーシ情勢は膠着化しつつある。
本稿では、膠着化するベラルーシ情勢を改めて整理するとともに、2月11〜12日に開催された「全ベラルーシ人民大会」の模様、それに合わせて採択されようとしている社会・経済発展プログラム、実際の経済・貿易パフォーマンス、そして対ロシア関係について報告する。
ロシアの二国間関係
ロシア重視を鮮明にするキルギス新政権
2021年1月10日に行われた大統領選挙で当選したキルギスのサディル・ジャパロフ新大統領は最初の外遊先としてロシアを選んだ。プーチン大統領と初の首脳会談で、ジャパロフはロシアとキルギスの二国間関係がハイレベルで続いていくことを強調した。
キルギスのロシア重視はジャパロフ現政権に始まったことではない。1990年代のキルギスは「民主化の優等生」として市場経済化や民主化を率先して進める国として欧米から高く評価を得ていた。2005年と2010年の政変を経て、中央アジア唯一の議会制国家も成立させた。しかし、外交面では、一貫してロシアとの関係を非常に重視し、2015年8月のユーラシア経済連合加盟以降は経済的なロシアへの依存度は拡大している。
ジャパロフは大統領権限強化を主張している。キルギスでは、議会制から(半)大統領制への回帰の可能性が高まっており、ますますロシアとキルギスの距離が近づくことが予想される。そこで本稿では、キルギスとロシアの関係についてみていくこととしたい。(中馬瑞貴)
ウクライナ情報交差点
DCFTA発効から5年のウクライナ・EU関係
新型コロナウイルスのパンデミックに翻弄された2020年であったが、同年のウクライナの商品輸出総額は492億ドルで、前年からの落ち込みは1.7%と小幅に留まった。ウクライナでは、重化学工業が斜陽化する中で、農産物・食品が輸出の稼ぎ頭に躍り出ている。2020年は、穀物の輸出額こそ2.2%減だったが、ひまわり油を中心とする油脂が21.7%増と大幅に伸び、これが輸出総額の落ち込みをある程度食い止めた。卑金属・同製品輸出は11.9%減と冴えなかった。一方、商品輸入総額は541億ドルで、前年から11.0%縮小したが、これには燃料・エネルギーの価格下落が影響している。
さて、ウクライナの貿易は、今般一つの大きな節目を迎えた。欧州連合との「深化した包括的な自由貿易圏(DCFTA)」が発効してから、ちょうど5年が経過したのである。(服部倫卓)
中央アジア情報バザール
コロナ禍の中央アジア各国の施政方針
年末から年始にかけて、中央アジア各国で大統領が施政方針演説(議会向け大統領教書や政府会合での大演説)を行った。コロナ禍で政策転換を余儀なくされた政権は今後どのような政策をとっていくのだろうか。本稿では、演説の中から主に経済・産業分野に係る内容を抽出し、中央アジアの今後の経済方針を紹介することにしたい。(中馬瑞貴)
ロシア政財界人物録
グラジエフとユーラシア経済統合
「ロシアを標的とする米国の攻撃に対抗する戦略的方針、その一つがユーラシア統合である」と、2018年に開催されたロシアのとある青少年フォーラムで発言した人物がいます。その名は、セルゲイ・Yu・グラジエフ。2019年10月より、ユーラシア経済連合の事務局であるユーラシア経済委員会の統合・マクロ経済担当委員(大臣)を務めています。先の発言をした時点では、彼はプーチン大統領の顧問でした。(長谷直哉)
データリテラシー
ロシア・NISで広がるTelegramの利用
昨今、プライベートや仕事を問わず、メールだけでなくチャットやメッセンジャーアプリを使用されている方は多いと思います。特に、コロナ禍発生に伴い、通信環境さえあればコスト無し、電話料金がかからずに国境を越えた即時コミュニケーションが可能となるこれらアプリを導入してみたケースは多々あるのではないでしょうか。この手のアプリは日本国内ではLINEが主流ですが、ロシア及びNIS諸国ではWhatsAppが主に使用されています。しかし、この状況はTelegramの躍進により、一気に変化し始めています。本稿では、Telegramの利用実態をロシアだけでなく、NIS諸国にまで広げて確認してみようと思います。(長谷直哉)
ロシアメディア最新事情
コロナ禍で感じる労働移民と地元市民の差
このコラムを書いているのは3月初頭。ロシアでワクチンの一般接種が始まってから、1ヵ月半経ちました。これだけの短期間の間にも、ワクチンが打てたり打てなかったり、規則がコロコロ変わり、労働移民、外国人に対するコロナ対策は、色々と変化してきました。自分自身もモスクワに住む移民のひとりなので、コロナにかかった自分の体験もまじえながら、コロナ禍における移民の生活についてご紹介します。(徳山あすか)
調査レポート
2020年のロシア乗用車市場の総括
―コロナ禍と市場のガラパゴス化―
ロシアNIS経済研究所 名誉研究員
坂口泉
ロシアの新車販売台数は2000年代半ばごろから急激に増加し始め、ピークだった2012年には300万台弱(LCVも含めた数字)に達したが、その後徐々に数字が悪化し始めた。さらに、油価の下落傾向が目立ち始めた2015年以降は不振の度合いが強まり、年間販売台数が200万台を割り込む状況が一貫して続いている。2020年も当初より苦戦が予測されており前年と同じ170万台強の年間販売台数を維持できれば上出来との見方が優勢だったが、コロナ禍という不測の事態の影響で上半期は想定以上の不振に見舞われ販売台数は前年同期比23%減の64万台にとどまった。ただ、下半期に入ってから販売台数は予想を上回るテンポで回復し、通年の数字は160万台となった。前年比で約9%の減少となったわけだが、上半期の状況を勘案するとコロナ禍の影響は最小限に抑えられたといえるのではなかろうか。
2020年のロシアの乗用車市場を振り返り、コロナ禍の影響とともに気になったのは、同市場の脱内燃機関という世界的トレンドに対する反応の鈍さである。市場関係者の間ではロシアでは脱内燃機関は難しいとの諦めムードが漂っており、少なくとも現時点では電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HV)が話題となることはほとんどない。このままの状況が続けば、ロシアの乗用車市場は世界標準とは異なる「進化」を遂げるガラパゴス島のような存在になるかもしれない。
本稿では、コロナ禍が市場に及ぼした影響やロシア市場におけるEVやHVのプレゼンスなどに着目しながら2020年のロシアの乗用車市場を回顧する。
調査レポート
ロシア極東のナショナルプロジェクト
ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所
O.プロパカロ P.ミナキル
本稿は、ロシアの極東連邦管区におけるナショナルプロジェクトの内容とその実施状況、またこれまで極東開発政策の中心的役割を果たしてきた極東社会経済発展国家プログラムとナショナルプロジェクトとの関係、そしてコロナ禍によるナショナルプロジェクトへの影響について、ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所のオリガ・プロパカロ所長ならびにパーヴェル・ミナキル博士に執筆を依頼したレポートである。(編集部)
イベント・レポート
ロシア・リャザン州貿易投資セミナー
1月27日、ロシアNIS貿易会では、オンラインイベント「ロシア・リャザン州貿易投資セミナー」を開催した。リャザン州は、ロシアの中央連邦管区に属する連邦構成主体で、同州の人口は111万人、中核都市は州都リャザン市(人口53.9万人)である。今回のセミナーでは、リャザン州政府が同州の経済・投資環境についての報告を行い、同州に所在する各種メーカー及びIT企業6社の代表者が、それぞれの事業内容や日本企業との協業可能性についての報告を行った。本イベントには、ミハイル・ガルージン駐日ロシア連邦特命全権大使、ピョートル・パヴレンコ在日ロシア連邦通商代表部主席代表、ニコライ・リュビーモフ・リャザン州知事をはじめ、日ロ双方から50名以上が参加した。本号では、同セミナーの報告要旨(質疑応答部分での内容も加味)をご紹介する。(服部雅史)
INSIDE RUSSIA
ロシア国民はプーチンの続投を望むのか?
ロシアの独立系調査機関であるレヴァダ・センターは、2021年2月18〜24日に、全国1,601人の成人回答者を対象に、プーチン大統領の続投の是非に関する世論調査を行った。今回は、その結果概要を紹介することにする。(服部倫卓)
ロシア極東羅針盤
極東進出日系企業拠点数
日本企業はロシアでどのようなビジネスを行っているか、また日本企業はロシアでどのような事業をつくっているかについて見てみよう。ロシアには418社の日本企業が進出しており、資源開発やプラントの建設のほか自動車や食品の製造や販売など、幅広くビジネスを展開している。しかし、その割合は全体の0.6%と1%も満たない。 業種別では、製造業が149社と約36%を占めて最も多く、次いで、卸売・小売業が95社(23%)、運輸・物流が37社(8.9%)となっている。地域別では、モスクワやサンクトペテルブルグなどロシアヨーロッパ地域に300社以上の日系企業が活動している。ウラジオストクやハバロフスクなど極東地域にも100社以上の日系企業が進出している。(齋藤大輔)
地域クローズアップ
ペルミ地方は知られざる欧州とアジアの境界
「ユーラシア(Eurasia)」とはヨーロッパ(Europe)とアジア(Asia)を合わせた言葉である。ヨーロッパとアジアにまたがる広大な領土を持つロシアではウラル山脈を境にその西側をロシアの欧州部、東側をアジア地域と呼ぶことが多く、周辺にヨーロッパとアジアの境を示す記念碑が何カ所も建立されている。その1つが本稿で紹介するペルミ地方にある。(中馬瑞貴)
エネルギー産業の話題
ヴォストークオイルの最新動向
ヴォストークオイルはセーチンCEOの肝いりでロスネフチが今一番力を入れているプロジェクトで、外資にも参加を積極的に呼びかけています。客観的に見てかなりチャレンジングなプロジェクトなのですが、2020年末に外資を誘致することに成功しました。また、やはり2020年末にロスネフチはパートナーであった独立石油ガス会社からパイヤハという大規模鉱床の権益を取得し、このプロジェクトに対する本気度を示しました。今回は、慌ただしい動きを見せるヴォストークオイル・プロジェクトに関する最新情報をご紹介します。(坂口泉)
ロジスティクス・ナビ
ロシア港湾動向:2020
2020年のロシア海洋港湾の動向を公式港湾統計に基づき解説します。コロナ禍で貨物量、輸送品目、コンテナ流動、個々の港湾の盛衰が鮮明になっています。(辻久子)
シリーズ 工業団地探訪
グリーンステート工業団地(レニングラード州)
サンクトペテルブルグのプルコヴォ国際空港に旅客機が着陸する際、機が西の陸側から滑走路にアプローチする場合には着陸の直前、右側の窓からトヨタ自動車の白亜の工場を眼にすることができる。風向きによって東の海側から滑走路に接近する際には着陸の寸前、右側の窓に複数の工場が密集した地区が眼に入る。ペテルブルグ市に隣接するレニングラード州のゴレロヴォ工業地区である。今回の探訪先は、このゴレロヴォ工業地区にあるグリーンステート工業団地としたい。(大橋巌)
デジタルITラボ
ロシアにおける医薬品ネット販売の展望
ロシアでは2020年4月以降、一般医薬品のネット販売が正式に許可されている。一般医薬品の宅配サービスは2018年より試験的に導入されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、市民の外出が制限されるため、政府が迅速に関連法案の改正に動いた形となった。今回は、ロシアにおける医薬品のネット販売を取り上げる。(牧野寛)
HOW TO ビジネス実務
ロシア労務管理:有給休暇(2)
前回に引き続きロシアの有給休暇がテーマです。今回はロシアで有給休暇を取得するまでの流れと手当の計算方法についてお話しいたします。計算式も登場しますので、電卓をご用意してお付き合い頂ければと思います。(小川弘美)
ユーラシア珍百景
バシキール・ソーダ社の石灰石運搬リフト
小誌の前号に、拙稿「ナヴァリヌィの反乱とロシアの地域情勢」を掲載した。その中で、地方反乱の一例として、住民の反対運動でバシコルトスタン共和国のバシキール・ソーダ社による石灰石採掘が中止に追い込まれた事例を挙げた。それで思い出したのだが、そう言えば私は何年か前バシキール・ソーダ社に見学に行き、その時、印象的な風景を目にしていたのだった。原料の石灰石が、リフトに載せられ、道を越えて工場敷地に運ばれていく様子である。(服部倫卓)
記者の「取写選択」
森喜朗が言わなかったこと
森喜朗元首相は2013年2月、安倍首相の特使としてモスクワ入りした。北方領土交渉が再加速に向かい、森がプーチン大統領と2001年に発した「2島返還交渉・2島帰属確認交渉」のイルクーツク声明が森の後任の小泉元首相による棚上げを経て、再評価される中での大役。「日ロのパイプ役」を自他共に認める森の表情には高揚感がにじんでいた。(小熊宏尚)