ロシアNIS調査月報
2024年3月号
特集◆ロシア・ウクライナをめぐる
地政学と地経学
 
特集◆ロシア・ウクライナをめぐる地政学と地経学
調査レポート
ウクライナ侵攻と「地経学戦争」
調査レポート
2年鑑の戦時体制下におけるウクライナ内政
―ゼレンスキー政権の迎える試練―
調査レポート
「友好国」との経済関係強化とロシア国内での評価
調査レポート
ロシアの軍需産業は覚醒したのか
―戦車と無人航空機を中心に―
調査レポート
ウクライナにおける輸送機器製造業の現状
ミニレポート
世界のウクライナ支援をめぐる最新動向
データバンク
2023年の日ロ貿易(速報値)
ウクライナ情報交差点
ウクライナの農業と鉄鋼業に光明は見えたか
ロシアの二国間関係
制裁下でも関係続くロシアとEU加盟国ハンガリー
エネルギー産業の話題
ウクライナ戦争後のロシア産石油ガス分野の変化
ロシア極東羅針盤
拡大続ける中国へのガス輸出
INSIDE RUSSIA
港湾貨物量で見る侵攻後のロシア産業・物流
コーカサス情報フォーカス
コーカサスに忍び寄る中国の影
ドーム・クニーギ
加藤学著『ウクライナ侵攻「地政学×地経学」の衝撃』

中央アジア情報バザール
中央アジアの脱炭素政策(1)
データリテラシー
労働力不足によるモスクワでの生活への影響
自動車産業時報
ウクライナ戦争に伴うロシア乗用車市場の変化
ロシア政財界人物録
ズベルバンクによるAI開発展望
ロシアメディア最新事情
ロックバンドをめぐるロシアとイスラエルの対応
シネマで見るユーラシア
シベリヤ物語
ロシア音楽の世界
プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」
業界トピックス
2024年1月の動き
ロシアを測るバロメーター
2024年1月末までの社会・経済の動向
通関統計
2023年の対ロシア・NIS諸国輸出入通関実績
おいしい生活
手軽に作れるジョージア料理シュクメルリ
記者の「取写選択」
キーウの"生みの親"


調査レポート
ウクライナ侵攻と「地経学戦争」

国際協力銀行 エネルギー・ソリューション部長
加藤学

 ウクライナ侵攻は2024年2月24日で3年目に入る。ロシアと西側諸国によるウクライナという「領土を巡る地政学的な戦争」は、ロシアが世界最大のエネルギー、とりわけ化石燃料輸出国であったため、世界各国を巻き込む形で「エネルギー・脱炭素に関する地経学的な攻防」へと戦線は拡大した。欧州で起きた軍事衝突は、欧州だけの問題にとどまらず、あたかも「地政学」に「地経学」が掛け合わされる「地政学」×「地経学」の衝撃となって、世界全体に伝播し、今なお世界を揺るがす重大な危機として継続している。(中略)本稿では、経済制裁を主導した米国と欧州、経済制裁に加わっていない国々・地域(中国、インド、南アジア、アフリカ)を取り上げ、各々分析の上、最後に日本のおかれた地経学的な様相を考察する。


調査レポート
2年鑑の戦時体制下におけるウクライナ内政
―ゼレンスキー政権の迎える試練―

東京大学先端科学技術研究センター 特任研究員
田中祐真

  2022年2月24日のロシアによるウクライナ全面侵攻から2年間にわたり、ウクライナは、NATO・EUの拡大や対露制裁、民主主義と権威主義の対立、世界経済や第三国への影響といった外交・国際関係論の面、そして第二次世界大戦以来の規模とされる戦争の分析と評価といった軍事的な面において世界の関心の的であり続けている。これに対し、ウクライナの内政については汚職の摘発事案や閣僚の人事異動などが時々短く報じられてはいるものの、少なくとも日本の情報空間における関心は比較的低いと言わざるを得ないであろう。
 今次戦争が長期化の様相を見せる中、ウクライナの国内政治情勢もまた、軍事・外交における動向と密接に関わりながら様々に動いているが、開戦後のウクライナ内政を扱った国内の研究は非常に少ない。また、今次戦争はロシアが仕掛けたことからロシアの専門家がロシアの視点から論じる傾向にあるが、ウクライナを正しく理解するためには、ウクライナを「ロシアの周辺国の1つ」としてロシアとの関係だけで見るのみならず、「ウクライナそのもの」を観察する必要があろう。
 かかる観点から、本稿は、ウクライナの国内報道及び論説を中心にこの2年間の主な動きを振り返り、今次戦争でその力が今まさに試されているヴォロディーミル・ゼレンスキー政権の置かれる状況と今後の課題について概観したい。


調査レポート
「友好国」とのの経済関係強化とロシア国内での評価

(一社)ロシアNIS貿易会モスクワ事務所 所長
長谷直哉

  本稿では、2023年11月28日にモスクワにて、ヴェードモスチ紙主催で開催された経済カンファレンス「BRICS諸国との対外経済活動」全体会合の概要を紹介することとしたい。ウクライナ戦争の展開とともに日ロ経済および日ロビジネス関係の交流や紐帯が弱くなり、またロシアに駐在する日本企業関係者も少なくなる中、ロシア連邦省庁関係者やロシア企業関係者が現在のロシア経済やロシアの対外経済関係をどのように評価しているのか、把握することが次第に困難となっている現状がある。こうした状況を踏まえ、本稿では上記会合における、「友好国」との経済関係強化をめぐるロシア官僚や経済人の発言を取りまとめた。


調査レポート
ロシアの軍需産業は覚醒したのか
―戦車と無人航空機を中心に―

北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター 教授
服部倫卓

  ロシアの軍需産業がどうなっていくかは、ウクライナでの戦争の行方を左右するだけでなく、今後のロシアという国の姿や、それをめぐる国際関係にも影響を及ぼす。秘密のベールに包まれ、解明は容易ではないが、本稿では断片的な情報を突き合わせながら、ロシア軍需産業の動向を概観し、特に戦車と無人航空機に焦点をあてる。


調査レポート
ウクライナにおける輸送機器製造業の現状

(一社)ロシアNIS貿易会ロシアNIS経済研究所 研究員
渡邊光太郎

 ウクライナの製造業は、情報が少ない。規模の点でも、質の点でも、成長性の点でも、あまりに弱いため、注目する人がいないからである。
 本シリーズではウクライナの製造業を概観してみる。第1回目の本稿では、輸送機器の製造を扱う。自動車、航空・宇宙、造船を紹介する。次回以降で金属産業を扱う。
 ウクライナの製造業は、開戦前から衰退傾向で、戦争でさらに被害を受けている。また、ロシアとの関係に依存していた部分があり、戦後、そのままの形で復興できない可能性が高い。戦後のウクライナの製造業は、本稿で紹介したものとは、違った姿になる可能性もある。


ミニレポート
世界のウクライナ復興支援をめぐる最新動向

 2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻以降、欧米を中心とする西側諸国はウクライナ支援を続けている。しかし、ウクライナ支援の中核を担う欧州で、ウクライナ産の穀物輸出において不利益を被る一部の国がウクライナ産穀物の輸入を拒否したり、米国議会でウクライナ支援に関わる予算が否決されたりと、ウクライナ支援に後ろ向きな動きが見え始め、メディアを中心に「ウクライナ支援疲れ」という言葉が取り上げられるようになった。さらには、ウクライナによる反転攻勢がうまくいっていないことが明らかとなり、ウクライナ勝利に向けて支援してきた欧米の方針転換もあり得るというような論調も出ている。  しかし、たとえ「疲弊」していようとも、支援が止まることはない。2024年2月1日、EUは紆余曲折を経たものの、ウクライナへの500億ユーロ(約7兆9,500億円)の追加支援を決定した。同じく2月に日本では初となる大規模なウクライナ復興支援会議が行われる。本稿では、世界の動向についてアップデートする。併せて、EUの足並みがそろわなかったり、米国議会が支援継続に待ったをかけたりと、支援継続への障壁が出ている現状について考察することにしたい。(中馬瑞貴)


ウクライナ情報交差点
ウクライナの農業と鉄鋼業に光明は見えたか

 ロシアの侵略を受けるウクライナは、米欧日などからの軍事・財政支援に支えられ、戦っている。今後も国際社会がウクライナ支援を継続すべきなのは言うまでもないが、ウクライナがなるべく自活できればそれに越したことはない。ウクライナの場合、産業面でその基盤となるのが、農業および鉄鋼業である。今回はその生産・輸出動向と課題につき報告する。(服部倫卓)


ロシアの二国間関係
制裁替えも関係続くロシアとEU加盟国ハンガリー

  ウクライナ侵攻以降、欧米との関係が過去最悪の状況に陥っているロシア。特に欧州/EUとの関係は、ソ連崩壊以降、過去最悪と言っても過言ではない。しかしEUが一枚岩かと言うとそうではない。特に、2010年から連続4期、就任回数では5期目を率いて、欧州では異例の長期政権を確立しているヴィクトル・オルバーン首相が率いるハンガリーに悩まされているようだ。
 オルバーン首相は、対ロ制裁に異を唱える一方で、ロシア産の石油・天然ガス需給を継続、さらには拡大している。そして2023年10月にはウクライナ侵攻以降、欧州の首脳としては唯一、ヴラジーミル・プーチン・ロシア大統領と会談も行い、天然ガスの追加購入で合意した。
 なぜ、EU加盟国のハンガリーがロシアとの関係を重視するのか、両国の歴史的、政治的、経済的関係を紐解いて、その理由を探ることにする。(中馬瑞貴)


エネルギー産業の話題
ウクライナ戦争後のロシア石油ガス分野の変化

 ウクライナ戦争はロシアの石油分野にもガス分野にも相応の影響を及ぼしました。石油分野は対ロ制裁の直接的な対象となり、2022年12月以降は海路での非友好国への石油の輸出がほぼ不可能となりました。ただ、輸出先の友好国へのシフトが迅速に進められた結果、対ロ制裁の影響は最小限に抑えられ、今のところ、石油の生産量や輸出量に劇的な変化は生じていません。
 ガス分野の方はLNGの生産・輸出には大きな影響が出ませんでしたが、様々な要因が重なりPLガスの欧州への輸出量が激減しました。それに伴い、ガスの生産量も減少しました。ウクライナ戦争から受けた否定的影響はガス分野の方が大きかったといえます。
 以上の状況を踏まえながら、本稿では、ウクライナ戦争後のロシアの石油分野とガス分野の動きをご紹介します。(坂口泉)


ロシア極東羅針盤
拡大を続ける中国へのガス輸出

 ロシアのウクライナ侵攻で液化天然ガス(LNG)の需給が世界的にひっ迫する中、ロシアが中国への天然ガスの輸出を増やしている。ガスプロムのミレル社長は2023年12月、プーチン大統領との会談の中で、2023年の中国向け輸出量が232億?と、前年より1.5倍に増える見通しを明らかにした。昨年初め時点での計画では220億?だった。ガスプロムは2022年以降、中国側の要請にもとづき、合意を上回る量の供給を続けている。2024年もさらに多くのガスが供給される見込みだ。(齋藤大輔)


INSIDE RUSSIA
港湾貨物量で見る侵攻後のロシア産業・物流

  ウクライナ侵攻開始後のロシアの貿易統計は、いまだに発表方針が定まっていない印象である。ただ、いずれにしても、詳しいデータが機動的に発表される状況にはない。
 こういう時には、港湾貨物量のデータから、貿易の流れを推察することが有効である。ロシアの自然独占問題研究所(IPEM)という機関が、四半期ごとにロシアの港湾貨物概況をいち早く発表しており便利なので、今回はそのデータを用いて2022〜2023年のロシアの港湾貨物動向と、そこから垣間見える産業・物流の様子を概観する(服部倫卓)


コーカサス情報フォーカス
コーカサスに忍び寄る中国の影

 2023年7月、中国がジョージアとの関係を戦略的パートナーシップに格上げする決定を下した。ロシアや中央アジアを含むユーラシア地域で存在感を増し続ける中国であるが、コーカサス情勢を見ていると、中国のプレゼンスをそれほど大きく感じることがあまりなかったように思われる。例えば、コーカサス各国の貿易相手国として、中国は、アルメニアで2位、ジョージアで3位、アゼルバイジャンで4位といずれも上位ではあるが、どの国もまだ中国の上にロシアがいる。しかし、コーカサス諸国への中国の進出やコーカサス諸国から中国へのアプローチは行われている。そこで本稿では、コーカサス諸国と中国の関係について最新動向を概説する。(中馬瑞貴)


ドーム・クニーギ
加藤学著『ウクライナ侵攻「地政学×地経学」の衝撃―領土、エネルギー、脱炭素、3つの戦い』

 本書は、本誌巻頭論文をご執筆いただいた加藤学氏による『ビジネスマン・プーチン』(東洋書店新社、2018年)、『皇帝兼CEOプーチンの行方』(日本橋出版、2022年)に次ぐ3冊目の著作である。(中居孝文)


中央アジア情報バザール
中央アジアの脱炭素政策(1)

 2023年12月31日、読売新聞が年の最後を飾る朝刊の一面で「中央アジア5か国と脱炭素で協力強化…政府、再生可能エネルギー導入後押しへ覚書結ぶ方針」という記事を掲載した。中央アジアの脱炭素化に向けて日本政府が各国と覚書を締結し、日本企業の技術導入を後押しすることで、協力関係を強化していくという方針を紹介している。
 記事によれば、すでに日本企業も具体的な案件を進めており、2024年には日本と中央アジアの首脳会談も予定される中で、今後、中央アジアの脱炭素政策およびプロジェクトなどに一定の関心が向けられていくことになると考えられる。
 そこで本連載では、複数回にわたって、中央アジアの脱炭素政策やプロジェクト、諸外国との協力事例などについて紹介し、日本との協力の可能性について考察してみたいと思う。初回となる本稿では、ここ最近、急速に日本で中央アジアとの脱炭素協力に関心が向けられるようになっている背景や動向を整理し、本テーマの導入部とする。(中馬瑞貴)


データリテラシー
労働力不足によるモスクワでの生活への影響

 現在のロシアは制裁適応、また戦時下対応のため、各種製造業がフル稼働状態にあり、熟練労働者の不足が各所で問題視されています。2023年10月には全国失業率が3%を割り込みました。ロシア科学アカデミー経済研究所に拠れば、2023年に480万人相当の労働力不足が生じたとの評価が示されています。しかし、このような人手不足の影響は先述の製造現場における熟練労働者だけでなく、広くエッセンシャル・ワーカー全体にも及んでいます。2024年には、農業、住宅公共サービス、そして建設分野においても人手不足が深刻化することが懸念されています。
 本稿では、製造業よりも日々の住民生活に密着した、都市での生活環境や暮らしやすさに影響を及ぼし得るサービス部門での労働力不足に注目し、主にモスクワ市でのケースを紹介しながら現状の問題点を指摘します。 (長谷直哉)


自動車産業時評
ウクライナ戦争に伴うロシア乗用車市場の変化

 ウクライナ戦争開始後にロシアの乗用車市場は大きく変化しました。それまで市場の核を形成していた「非友好国」のメーカーが次々とロシア市場から撤退し、新車市場で購入可能なのはLADAやUAZなどの国産ブランド車と、友好国である中国ブランドの車にほぼ限定されるようになりました。そこに、ウクライナ戦争の開始に伴う物流面での混乱なども加わり、2022年のロシアの新車販売台数は前年の半分以下の約69万台にとどまりました。2023年は中国ブランド車に牽引されるような形で販売が回復しましたが、まだ2021年の数字を下回っています。本稿では、戦争開始前と開始後を対比させながら、ロシアの乗用車市場の変化を説明します。(坂口泉)


ロシア政財界人物録
ズベルバンクによるAI開発展望

 最近はChatGPTの登場を皮切りに、日本でもいわゆる生成AIへの関心が高まっています。様々なSNSプラットフォームやYouTubeなどでAIを活用した画像生成で作成されたイラストを目にすることは珍しくなくなりましたし、多くの方が仕事で利用されているMicrosoft Officeにおいてもワードやエクセル作業においてMicrosoft 365 CopilotによるAI業務支援を受けられるようになっています。
 しかし、ウクライナ侵攻後に西側の制裁下にあるロシアでは、ChatGPTを開発するOpenAI社がロシアからのアクセスを制限しているため、通常の方法ではChatGPT、またこれをベースした様々なアプリケーションを利用することができません。このような状況下にもかかわらず、ズベルバンクは「ロシア版ChatGPT」のGigaChatを2023年4月に立ち上げました。
 本稿ではこうしたロシアでの生成AI開発をめぐる環境を踏まえ、グレフ・ズベルバンク総裁の関連発言をとり上げて紹介します。(長谷直哉)


ロシアメディア最新事情
ロックバンドをめぐるロシアとイスラエルの対応

 1月24日、有名ロックバンド「Bi-2」がタイのプーケット島で現地警察に拘束された事件は、ロシアのネットメディアで大きな反響を呼びました。バンドはもともとロシアで大人気でしたが、プーチン政権に反対し国を出てから、世界各地でコンサートを開いていました。バンドのメンバーがロシアに強制送還されるのかが焦点でしたが、結果的に全員がイスラエルへ送られました。バンドはなぜロシアを去ったのか、なぜ注目を集めたのか、解説していきます。(徳山あすか)


シネマで見るユーラシア
シベリヤ物語

 ロシア・ビジネスに携わっていた何人かの方から、戦後、ソ連初のカラー映画『石の花』を見た時の感動についてお聞きしたことがある。色鮮やかな映像は多くの日本人にとっても初めての体験であり、日本の再出発と重なって記憶されているようだった。
 今回取り上げる『シベリヤ物語』は、『石の花』に続く同国のカラー作品である。天才石工職人の青年の前に伝説の「銅山の女王」が現れ、「一年に一度咲く石の花を見たければ一緒に来なさい」と誘われてというファンタジー仕立ての『石の花』に対し、戦争の惨禍を乗り越えて国づくりをしていこうと観る者に呼びかけるような作品が『シベリヤ物語』だ。(芳地隆之)


ロシア音楽の世界
プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」

 小学生の時からクラシック音楽コンサートでは、通常、美しき旋律に心踊らされ、輝かしい響きに酔い、感動に出会うものだと思って通っていたのだが、高校生になったある日のこと、とんでもない恐怖を覚える演奏会に出会ってしまった。
 それが読売日本交響楽団第116回定期演奏会での凄まじい体験だった。気鋭のフランス人指揮者セルジュ・ボドが披露したスキタイ組曲で、1975年11月、東京文化会館の前から2列目で聴いた演奏であった。未知なる海外の地、欧州や中央アジアのステップ草原で、太古の時代に繰り広げられた血で血を洗う部族抗争の残虐性、生贄を捧げる原始宗教の野蛮性、それらを表現したプロコフィエフの音楽に、私は、ヤマタノオロチやゴジラやジョーズをはるかに超える恐怖の戦慄を覚えたのであった。(ヒロ・ミヒャエル小倉)


おいしい生活
手軽に作れるジョージア料理シュクメルリ

 今回紹介するのはそんなシチューにそっくりなジョージア料理のシュクメルリ。松屋のメニューで一躍、有名になり、2024年2月には3年ぶりに復活して登場。S&B食品からも素(ルー)が発売されるなど、日本で知名度が上がっている。(中馬瑞貴)


記者の「取写選択」
キーウの"生みの親"

 2022年12月に都内で行われた「ユーキャン新語流行語大賞」授賞式。晴れやかな会場に中沢英彦・東京外国語大名誉教授の姿があった。早くからウクライナ首都表記を「キーウ」にすべしと提唱。新語「キーウ」の有力な生みの親≠セとされたのだ。(小熊宏尚)